【石膏像】アリアスの魅力：中性的な美しさと神秘の背景！そのモデルは？

美術デッサンでおなじみの石膏像「アリアス」。多くの学生さんが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか？

でも、この像の背後にどんな物語が隠されているのか、ご存知ですか？今回は、アリアスの背景やその魅力について、ちょっと掘り下げてみます。

微笑んでいるようにも、悲しんでいるようにも見えるその表情は、見る人の想像力を刺激し、デッサンの題材としても非常に興味深いものとなっています。

石膏像「アリアス」のモデルは？

(画像：楽天市場)

石膏像「アリアス」って、学校の美術室やデッサンの題材で一度は見たことがある方も多いですよね。でも、この像のモデルが誰なのかご存じですか？

実は、ローマのカピトリーノ美術館に収蔵されている《ディオニュソスの頭部》が元になっているんです。

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注目は《ディオニュソスの頭部》！#石膏デッサン の題材で親しまれている #アリアス の原作が、初来日しています！美術系の学生さんたちは見覚えのあるかたもいるのではないでしょうか？… pic.twitter.com/bTTNUa8bC1

— 「永遠の都ローマ展」 @福岡市美術館【公式】 (@roma2023_24) October 4, 2023

ディオニュソス像ってどんな像？

《ディオニュソスの頭部》は、約1800年前の2世紀後半にローマで作られた大理石像です。

その元をたどると、さらに約500年前、紀元前4世紀のギリシャ彫刻がベースになっていると考えられています。

残念ながらこのギリシャ彫刻のオリジナルは現存していませんが、ローマ時代に制作されたこの大理石像は、その高い芸術性から評価され、多くの模倣が行われました。

この像は明治時代、日本初の美術教育機関である工部美術学校（現在の東京藝術大学の前身）に“美の規範”として石膏コピーが輸入されました。

こうして「アリアス」は、美術教育の現場で長く親しまれる存在になったのです。

アリアスをもっと好きになる！美の力で性別も超える中性的な魅力

石膏像「アリアス」の元になった《ディオニュソスの頭部》には、その中性的で美しい佇まいが大きな魅力としてあります。

柔らかい表情や、ふわりと流れるような髪の美しさは、性別や役割に縛られない自由な存在感を感じさせます。この像を見たとき、あなたは何を思い浮かべますか？

昨日ローマ展で、学校の美術室でお世話になっていたディオニュソスの頭部の本物に出会いました。この写真は図録の写真なんですが、この写真はなんなんだよって思うくらいに本物がとんでもねえ美人だった。図録とかは対比を正確にするために望遠レンズで撮ってるんだと思うんですが、肉眼で見るのと全然 pic.twitter.com/2CakApaXvx

— イガワ (@rakugakiigawa) December 6, 2023

この中性的な美しさが理由なのでしょう、実は《ディオニュソスの頭部》が「アリアドネ像」だと解釈されていた時代もありました。ディオニュソスとアリアドネはギリシャ神話で深く結びついた恋人同士。その背景が、像の解釈にも影響を与えていたんですね。

こうした解釈の影響は、明治時代の日本にも広がりました。当時、工部美術学校で学んでいた小栗令裕という学生が、この石膏像を模刻して《欧州婦人アリアンヌ半身》という作品を作ったんです。

小栗の作品では、髪飾りや服の装飾が加えられたり、胸の膨らみが描かれたりしていて、明らかに女性像として表現されています。「アリアンヌ」というタイトルも、かつての「アリアドネ像」としての解釈や、ディオニュソスとアリアドネの物語からインスピレーションを受けたものだと思われます。

美しさは時代や文化を超え、性別まで変えてしまうんですね～！こんな背景を知ると、「アリアス」がもっと特別な存在に思えてきませんか？

アリアスのモデルは「ディオニュソス」！超美形の神様だったの？！

石膏像「アリアス」のモデルが、実は酒と豊穣の神ディオニュソス（バッカス）だったと判明しました！

中性的で調和の取れた美しさを持つ彼ですが、果たして「超美形の神様」と言えるのでしょうか？

その答えは……「作品や時代による！」が正直なところ。でも、この問いを少し掘り下げて考えてみましょう。

ディオニュソスの「美しさ」の秘密

ディオニュソスはギリシャ神話に登場する、ワインや宴会、そして豊穣の象徴でもある神様です。彼の「美しさ」は、単に外見だけでなく、「楽しさ」や「生命力」といった目に見えない魅力が大きな要素となっています。

特にルネサンスやバロック期の芸術作品では、ディオニュソスが「超美形」として描かれることがありました。その中でも特に注目すべき作品が、ミケランジェロとカラヴァッジョによるディオニュソスの表現です。

★ミケランジェロの《ディオニュソス》

(画像：楽天市場)

ミケランジェロが1496年から1497年頃に制作したとされる彫刻バッカス（ディオニュソス）は、彼の初期の作品の一つです。この彫刻では、ディオニュソスの楽しげで少し酔っ払ったような姿が表現されています。

特徴を簡単にまとめると：

• ゆるやかな立ち姿：体を少し傾けたリラックスしたポーズで、酔いの影響を感じさせる動きとバランスが表現されています。
• 葡萄と酒の象徴：右手に葡萄の房、左手には逆さまの酒杯、頭には葡萄の葉の冠を持ち、豊穣や宴会の神としての役割を象徴しています。
• ふくよかな体つき：若々しい肉体ながら少しふくよかな形が、豊穣の神としての生命力を感じさせます。
• 表情の豊かさ：微笑むような表情には、酔いによる陶酔感や自由な精神が表現されています。
• サテュロスの存在：足元にいるサテュロスが、ディオニュソスの享楽的な世界観を強調しています。

★カラヴァッジョの《ディオニュソス》

(画像：楽天市場)

カラヴァッジョが1596年頃に描いた《ディオニュソス》は、ルネサンス末期からバロック初期にかけて活躍した彼の代表作の一つです。この作品では、ワインと宴の神であるディオニュソスが、若々しい青年として描かれています。

特徴を簡単にまとめると：

• モデルは一般の青年？：神を理想化するのではなく、親しみやすい一般の青年がモデルとされました。そのため、人間味が感じられる表現です。
• 葡萄の冠と酒の象徴：頭には葡萄の冠、手にはワイングラスを持ち、背景には果物が描かれ、豊穣と宴会を象徴しています。
• 中性的な魅力：柔らかな顔立ちや優雅なポーズが、彼の中性的でミステリアスな雰囲気を引き立てています。
• ほんのり酔った表情：ぼんやりとした視線が、陶酔の瞬間を感じさせます。
• カラヴァッジョらしい光と影：キアロスクーロ（明暗法）によるドラマチックな表現で、人物の存在感が際立っています。

アリアスとディオニュソスの共通点

アリアスの石膏像をよく観察すると、ディオニュソスに似た特徴がいくつか浮かび上がります。柔らかで穏やかな表情、中性的な魅力、優美な髪の流れ……。

これらの特徴を考えると、アリアスはディオニュソスの中性的で調和の取れた美しさを完璧に受け継いでいると言えます。

そして、それが「超美形」かどうかは見る人の感性次第。美しさの中に、楽しさや生命力、さらには神秘的な雰囲気が共存するディオニュソス像は、まさに「アリアス」の魅力を形作る要素そのものなのです。

美しさの多面性を知るとアリアスがもっと特別に！

もしアリアスのモデルがディオニュソスだったとしたら、彼は確かに「超美形の神様」としての一面を持ちながら、豊穣の象徴として親しみやすい姿も持つ、多面的な存在です。

この神秘的な多面性を知ることで、石膏像「アリアス」を眺める視点も変わってくるのではないでしょうか？

アリアスの芸術的な美しさの理由

アリアスの石膏像、見れば見るほどその魅力に引き込まれますよね。その美しさの秘密を、いくつかのポイントに分けてご紹介します。

1. 調和のとれたプロポーション

アリアスの顔立ちは、非常にバランスが良く、見る人に安定感を与えます。

額から鼻、口、顎にかけてのラインが滑らかで、全体的に調和のとれたプロポーションが特徴です。このバランスの良さが、見る人に心地よさを感じさせるのでしょう。

2. 陰影が際立つ造形

アリアスの髪の毛の彫刻は、細やかなカールや流れが表現されており、光が当たることで美しい陰影を生み出します。この陰影が、立体感や奥行きを強調し、像全体に生命感を与えています。

3. 中性的な魅力

アリアスの表情や首の太さ、髪型などから、男性とも女性とも取れる中性的な魅力を持っています。

この曖昧さが、見る人の想像力を刺激し、さまざまな解釈を生む要因となっています。そのため、デッサンの題材としても非常に興味深い存在となっているのです。

このように、アリアスの美しさは、バランスの良いプロポーションや陰影の効果、中性的な魅力など、さまざまな要素が組み合わさって生まれています。

次は、アリアス（アリアドネ）にまつわる伝説について、さらに深く掘り下げてみたいと思います。

アリアス（アリアドネ）の伝説について

「アリアス（アリアドネ）の伝説」についてお話ししますね。

アリアドネは、ギリシャ神話に登場するクレタ島の王女で、その物語はとても興味深いんです。

ミノタウロスと迷宮

まず、アリアドネのお父さんはクレタ王ミノス。

彼の妻パーシパエーが、牛の頭を持つ怪物ミノタウロスを産んでしまい、ミノス王はその怪物を閉じ込めるために巨大な迷宮（ラビリンス）を作りました。

この迷宮はとても複雑で、一度入ったら二度と出られないと言われていました。

テセウスとの出会い

そんな中、アテナイの英雄テセウスがミノタウロス退治のためにクレタ島を訪れます。アリアドネはテセウスに一目惚れし、彼を助けることに決めました。

彼女はテセウスに「糸玉」を渡し、迷宮の入り口に糸を結びつけてから進むよう助言します。これにより、テセウスはミノタウロスを倒した後、糸をたどって無事に迷宮から脱出することができました。

アリアドネのその後

テセウスとアリアドネは共にクレタ島を脱出しますが、その後の展開には諸説あります。

一説では、二人はナクソス島に立ち寄った際、テセウスがアリアドネを置き去りにしたとも、別の説では、アリアドネがディオニュソス（酒の神）と出会い、彼の妻となったとも言われています。

このように、アリアドネの物語は愛と冒険、そして裏切りが交錯するドラマチックなものです。彼女の名前は「アリアドネの糸」として、難しい問題を解決する手がかりを意味する表現としても知られています。

アリアスの石膏像がこのアリアドネをモデルにしているかは定かではありませんが、こうした神話の背景を知ることで、石膏像に対する理解やデッサンの際のインスピレーションが深まるかもしれませんね。

次は、これまでのお話をまとめて、アリアスの魅力を再確認してみたいと思います！

まとめ

石膏像「アリアス」。ただのデッサン用のモデルだと思っていたら、意外にもその背後にはギリシャ神話、ローマ美術、そして明治日本の美術教育という壮大なドラマが隠れていました！

元になった《ディオニュソスの頭部》は、中性的な美しさをまとった存在。見る人によっては「女性らしい」とも「神秘的な男性」とも映る、まさに自由な解釈を誘う像です。

そして、この曖昧さが「アリアドネ像」なんて言われたり、小栗令裕によって女性像に再解釈されたりするきっかけになったわけです。

ここまでくると、もう「アリアス＝ディオニュソス」説がただの美術史じゃなく、ちょっとミステリーのように感じませんか？見る人の感性次第で形を変え、性別も文化も時代も軽々と飛び越えていくなんて…やっぱり「アリアス」はただの石膏像じゃない！

次に「アリアス」を見るときは、ぜひその柔らかな表情や髪の流れに注目してみてください。